福島第1原発事故吉田調書抄録(2)
福島第1原発事故 吉田調書 第2回目です。
海水注入「テレビ会議、音声切った」「うるさい、黙っていろ、と」
東京電力福島第1原発事故で、所長として現場の指揮を執った吉田昌郎氏
の聞き取り調査をまとめた「吉田調書」。2回目は、原発への海水注入に
関する吉田氏の証言をまとめた。
〈全交流電源を喪失した福島第1原発では、東日本大震災翌日の平成2
3年3月12日午後、炉心の状態が分からなくなってきた〉
--水位計がおかしかったと
吉田氏「間違いなくおかしかった。そこを信用し過ぎていたという所に
ついては大反省です」
--水位計が信用できないと思い始めたのはいつか
吉田氏「水位計そのものよりも放射線量が上がっているのがおかしいと。
普通に冷却が効いていれば、水位はあって線量が上がることはないわけで
すね。想像からすると、燃料損傷に至る可能性はあるなと」
〈燃料を冷やす淡水が尽き始める。通常は水につかっている燃料が露出
すれば炉心溶融(メルトダウン)に至り、放射性物質が拡散する。現場で
は、苦肉の策として海水を投入する準備が始められた〉
--最初の海水注入の指示は3月12日午後2時54分か
吉田氏「書いてあるものとしては最初になるが、この日の午後から海水
注入をする準備をしておきなさいということは言っております。
3号機の逆洗弁ピット(くぼ地)に津波の時の海水が残っている。かなり
の量があるというのを聞いて、そこから取るしかない。注水しようと最終
決定したのが午後2時54分で、もともとの検討はその前にやっている」
--海水注入はテレビ会議を通じて東電本店の人と話し合ったのか
吉田氏「誰かに聞いたと言うより、淡水をいつまでやっていても間に合
わない。だから海水を入れるしかないと腹を決めていましたので、会議で
言ったかどうかは別にして消防班に海水を入れるにはどうすればいいのか
と検討させた」
--本店は把握していたのか
吉田氏「細かい状況については報告していなかったですね。(テレビ会
議の)音声切っていますよ」
--切れるんですか
吉田氏「切れる。図面を持ってきて、ポンプ何台か、消防車何台あるんだ
と検討している。それなら別にいちいち言う必要はないわけで。本店に言
ったって、逆洗弁ピットに海水がたまっているなんていう情報は100万
年経ったって出てきませんから、現場で探すしかないわけですね」
--炉の中に海水を入れる経験は聞いたことがあったか
吉田氏「世界中でそんなことをしたことは1回もありません。ないけれ
ども、淡水が有限で、冷やすのに無限大にあるのは海水しかないですから、
もう入れるしかない」
--海水を入れると機器が全部使えなくなるからお金がかかるとは思わ
なかったか
吉田氏「全くなかったです。もう燃料が損傷している段階でこの炉はも
うだめだと。再使用なんて一切考えていなかったですね」
〈12日午後3時半に海水注入の準備が完了したが、その6分後、1号
機が水素爆発したため中断。再び準備が整ったため、午後7時4分に海水
注入を開始した〉
--海水注入開始はこの時間でいいのか
吉田氏「いろいろと取り沙汰されているが、注入した直後に官邸にいる
武黒(一郎・東京電力フェロー)から電話がありまして、官邸では海水注
入は了解していないと。
だから海水注入は停止しろという指示でした。本店と話をして、やむを得
ないというような判断で止めるかと。うちはそんなことは全く思っていな
くて試験注入の開始という位置づけです」
「ただ私はこの時点で注水を停止するなんて毛頭考えていませんでした
から、いつ再開できるか担保のないような指示には従えないので私の判断
でやると。
担当している防災班長には、中止命令はするけれども、絶対に中止しては
だめだという指示をして、それで本店には中止したという報告をしたとい
うことです」
--海水注入は所長に与えられた権限と考えるのか
吉田氏「マニュアルもありませんから、極端なことを言えば、私の勘と
いったらおかしいんですけれども、判断でやる話だと考えておりました」
--それを止めろというのは雑音だと考えるのか。本店との話し合いは
吉田氏「何だかんだいうのは、全部雑音です。本店の問い合わせが多い
んです。サポートではないんですよ。途中で頭にきて、うるさい、黙って
いろと、何回も言った覚えがあります」(肩書は当時)
「産経ニュース」より抜粋。
吉田所長 さすがですね!!
現場を知り尽くしているからこそ上層部への報告は、うそをついて実際は
海水の注入を続ける。
ここで本当に海水の注入を中止していたら、もっとひどい結果になってい
たと思います。
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