福島第1原発事故吉田調書抄録(6)
福島第1原発事故 吉田調書 第6回目です。
3号機爆発 「死者出たなら腹切り死のうと」
東京電力福島第1原発事故で、所長として現場の指揮を執った吉田昌郎
氏の聞き取り調査をまとめた「吉田調書」。6回目は、3号機が爆発した
ときの証言をまとめた。
〈ヒアリングは平成23年3月14日の行動に移っている。14日は午
前6時半ごろに3号機で原子炉圧力が上昇し、爆発する可能性が高まって
いた。危険と判断されたため約1時間、作業を中断、作業員は現場から退
避していた〉
吉田氏「退避かけても2号機のラインを作ったりとか、放っておけない
んでものすごく迷ったんです。
作業させるか、させないか、再開させるのかどうか。これは議事録には載
ってませんけれど、このとき本店と『いつまで退避させるんだ』という話
があり、『爆発する可能性があって現場に人間をやれない』と私は言った
んです。ただ2号機の注水とかあるんで、どこかでやる必要があるという
話をしました」
〈作業を進めたい本店と作業員の安全を考え、再開に迷う吉田氏。安全だ
けを考え作業が滞れば、状況はさらに悪化する。吉田氏はジレンマを抱え
ていた〉
吉田氏「そろそろ現場をやってくれないかと話があり、『非常に危険だ
けれども現場でやらないと次のステップにいけないんでお願いします』と
(作業員に)指示したと思います。圧力が落ち着いてきたから、急に爆発
することはない、との判断で現場に出したら爆発した」
--現場に行ってから爆発までどれぐらいの時間があったのか
吉田氏「(再開の)『ゴー』かけて、よしじゃあという段取りにかかっ
たぐらいで。自衛隊の方も行かれていて準備したらすぐ『バーン』という
感じだったと聞いています。
最初、現場から『四十何人行方不明』という話が入ってきた。私、そのと
き死のうと思いました。四十何人亡くなっているんだとすると、そこで腹
切ろうと思っていました」
〈情報が錯綜する中、多数の死者を出した責任を取ることを考えていた吉
田氏。だが、徐々に情報が入り行方不明者はいなくなっていった〉
吉田氏「自衛隊は免震重要棟に寄らないで配備されたんで状況が入って
こなかったが、4人けがをされていて1人は結構深手だったと聞いていま
す。
皆さん命はとりとめ、不幸中の幸いです。がれきが吹っ飛んでくる中で現
場にいて、1人も死んでいない。私は仏様のおかげとしか思えないんで
す」
--すごい映像ですものね。あの爆発。1号機と違いますね
吉田氏「1号機は板だけですから、ポーンで終わりなんですが、3号機
はコンクリートが飛んでますからね」
--爆発をしてからの対応ですが、作業は
吉田氏「全部中止」
--現場から引き揚げることになるわけですね。次に再開するのが、ど
こかの時点でありますね。それはどういう情報が入り、どう判断したので
すか
吉田氏「1号機の時と同じく爆発しているわけですから、注水ラインだ
とかいろんなラインが死んでしまっている可能性が高い。
1号機、3号機の注水も止まっている。それ以外の機器も止まっている。
みんな茫然としているのと、思考停止状態みたいになっているわけです」
〈茫然自失の部下に指揮官は、どのように対応したのか〉
吉田氏「そこで、全員集めて『こんな状態で作業を再開してこんな状態
になって、私の判断が悪かった。申し訳ない』と話をして、現時点で注水
が止まっている、放っておくともっとひどい状態になる。
現場はがれきの山になっているはずだから、がれきの撤去、注水の準備に
即応してくれと頭を下げて頼んだんです。そうしたら、本当に感動したの
は、みんな現場に行こうとするわけです」
「産経ニュース」より抜粋。
この時の吉田所長の決断は凄いと思います。
部下の生命の安全と事故対策の再開のどちらをとるか?
『非常に危険だけれども現場でやらないと次のステップにいけないんでお
願いします』と(作業員に)指示したと思います。圧力が落ち着いてきた
から、急に爆発することはない、との判断で現場に出したら爆発した
その時の被害状況は、行方不明者はいなくなっていった。
こんな最悪の状況で作業の再開を指示したところ、従業員たちはみんな現
場に行こうとしたという事は、部下は上司を信頼し、この危機から乗り越
えたい気持ちの表れだと思います。
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